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高松地方裁判所 昭和29年(ワ)399号 判決

原告 堀田正

被告 佐野精造

主文

被告は原告に対し金八万二千円及びこれに対する昭和二十七年二月二十一日以降その支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は原告が被告のため金二万円の担保を供するときは、仮りにこれを執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は主文第一、二項と同旨の判決並に担保を条件とする仮執行の宣言を求め、その請求の原因として及び被告の主張に対し次のように述べた。

「(請求の原因)

一、被告は昭和二十六年一月原告に対し前渡金八万四千円の返還請求権があると称して、原告を相手に、高松地方裁判所にその前渡金返還請求の訴訟を提起し(同庁昭和二十六年(ワ)第二〇号事件)、同裁判所は昭和二十七年一月十四日被告勝訴の判決、すなわち本件原告は本件被告に対し金八万四千円及びこれに対する昭和二十六年二月二日以降その支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ、訴訟費用は本件原告の負担とする、この判決は本件被告が本件原告のため金二万八千円又はこれに相当する有価証券を担保に供するときは仮りに執行することができる旨の仮執行宣言付判決の言渡をした。この一審判決に対し原告が高松高等裁判所に控訴し(同庁昭和二十七年(ネ)第四六号事件)たところ、同高等裁判所では昭和二十七年九月十九日この一審判決を取り消し、事件を原審に差し戻す旨の判決を言渡した。そしてこの差戻の後、事件は高松地方裁判所昭和二十八年(ワ)第三〇五号事件として審理を受け、昭和二十八年八月三十一日本件被告の請求は理由がないとして請求棄却の判決があり、これに対し被告から控訴したのであるが(高松高等裁判所昭和二十八年(ネ)第三四〇号事件)、昭和二十九年五月六日一審どおりの理由で控訴棄却の控訴審の判決の言渡があり、その判決が同年六月十七日確定した。

二、ところで被告はその間に、前記仮執行宣言付勝訴判決の正本に基いて、原告を相手に、水戸地方裁判所に対し債権差押並に転付命令を申請し(同庁昭和二十七年(ル)第三号事件)、同裁判所から昭和二十七年二月十八日附で、原告の訴外株式会社富士銀行水戸支店に対する金八万二千円の債権の差押並に転付命令を受け、その命令は同年同月十九日右訴外銀行に、同年同月二十日原告にそれぞれ送達されたのであるが、被告はこの命令に基き同年同月二十一日その債権の取立をすました。

三、しかしながら被告の強制執行の基本となつた仮執行宣言付勝訴判決は前記のようにその後控訴審で取り消され、なおその後被告の請求は理由がない旨の判決も確定したのであるから、原告は被告に対し民事訴訟法第百九十八条第二項の規定により、被告が仮執行の宣言に基き強制執行で原告から取り立てた前記金八万二千円及びこれに対するその強制執行のため原告がその金員に対する債権を失つた日の後である昭和二十七年二月二十一日以降その支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるため本訴に及んだものである。なお本訴のような請求は、前記高松高等裁判所昭和二十七年(ネ)第四六号事件において原告から訴求するのが通常の方法であろうが、当時原告訴訟代理人は仮執行の宣言に基いて前記のような強制執行が行われたことを知らなかつたため、本訴のような独立の訴を提起したものであるが、本訴の請求が独立の訴ででも訴求できることは異論のないところである。

(被告の主張に対する原告の認否並に主張)

第一、(一) 被告主張の後記第一の(二)の事実中、高松高等裁判所昭和二十八年(ネ)第三四〇号事件の判決で被告の敗訴した理由が被告主張のようなものであること、原告が昭和二十五年度産ごぼう種子一石を被告に送付したがしかし昭和二十六年度産のそれは送付しかなかつたこと、被告からその主張のような解除の告知があつたこと、原告が被告から売買代金としてそれまでに十万五千円を受領していること、原告送付の昭和二十五年度産種子一石の当時の時価が二万一千円であることは認める。

(二) しかし被告にはその主張するような解除権はない。すなわち(イ)原告には昭和二十六年度産種子一石につき履行遅滞の責任がない。むしろ被告の方に、その履行が遅くれたことにつき責むべき事情がある。原、被告間には従前の取引について昭和二十五年七月十日、原告が売買代金十万五千円の返還に代えて昭和二十五、六年度産ごぼう種子各一石計二石を被告に代物弁済する旨の示談契約ができたのであるが、その後その契約の履行として原告が昭和二十五年度産種子一石を被告に送付した後、別に被告に対し落花生六石を売却したところ被告はそれから間もない昭和二十六年一月十六日前記売買代金につき前記の高松地方裁判所昭和二十六年(ワ)第二〇号前渡金返還請求訴訟を提起し、その請求権を理由に同年同月二十九日右落花生代金八万二千円に対する原告の債権につき仮差押をしたり、又その後右訴訟事件の仮執行宣言付勝訴判決に基いて前記のように原告に対し強制執行をしたりして、前記示談契約の成立を否定し、その弁済の受領を拒否する態度を示して原告を去就に迷わせ、故意に原告の履行をできなくしたものである。かような被告の態度にかゝわらず、そしてなお右訴訟の結果の確定以前にすでに予め、原告にだけその債務の履行を要求するのは一般取引の通念に反するし、又さような被告の態度では原告が弁済の提供をしたとしても被告の受領拒否は明らかであるから、原告が言語上の提供もしていなくても原告には履行遅滞の責任はない。(ロ)仮りに原告に履行遅滞があつたとしても、被告は相当期間を定めて原告に昭和二十六年度産種子一石につき履行を催告の後初めて解除できるのであるが、被告は全く原告に履行の催告をしたことがないからである。

仮りに被告に解除権があるとしても、右(イ)記載のような事実が被告にある反面原告は、前記高松高等裁判所昭和二十八(ネ)第三四〇号事件で前記示談契約が確認せられ、被告の前渡金返還請求権のないことが判決で確定せられたので、その後間もない昭和二十九年十月末、当時ごぼう種子は昭和二十六年以来年々市価騰貴の状況にあつた不利をしのんで、その種子一石を被告に送付して示談契約上の債務の履行を完了しているのであつて、かような事態の下で被告が解除権を行使するのは民法第一条にいう信義に反する権利の行使で、権利の濫用であるから解除の効力はない。

(三) 仮りに被告の解除が有効であるとしても、本訴の仮執行の宣言に基き給付したものの返還並に損害賠償の請求権は一種の不法行為に基く請求権であつて、債務が不法行為に基くものであるときはその債務者は相殺を以てその債権者に対抗することができないのであるから、被告の相殺は許されない。

第二、(一) 被告主張の後記第二の(二)の(イ)の事実中原告が昭和二十九年十月頃送付した種子一石が昭和二十九年度産のものであること、(ロ)の事実中前記代物弁済の示談契約が裁判外の和解であることは認めるがその他の事実は争う。

(二) 前記示談契約上の債務は被告主張のような性質上の、いわゆる絶対的、定期行為債務でも約定上の定期行為債務でもない。絶対的定期行為というのは契約の性質上一定の日時又は期間内に履行をするのでなければ契約を締結した目的を達することができない場合で、しかもその目的を達することができない事情が契約の内容として客観化されている(当事者の別段の意思表示がなくても社会的経験法則上当然に履行の時期が重要視される)場合をいうのである。ところで原、被告はともに種苗類の販売業者(被告は卸、小売業者)で、右示談契約上の代物弁済はその各自の営業商品の一種であるごぼう種子を代物弁済として原告から被告に交付することを契約したものであつて、その趣旨は昭和二十五、六年度の新種子各一石宛を代物弁済として送付するというだけのものである。従つてそれはその履行が必ず昭和二十五、六年度内に行われなければ契約の目的を達することができないという特殊な性質の契約でもないし又その種子が必ず昭和二十五、六年度産のものでなければ契約の目的が達せられぬというような性質のものでもない。当事者としても双方ともにさような考を持つていなかつたことはその契約締結の経緯からして明らかである。従つて原告の債務は絶対的定期行為債務でも、約定上の定期行為債務でもないから、被告が履行の催告もせずに示談契約を解除することはできない。

(三) 仮りに原告の債務がその絶対的定期行為の債務であるとしても、原告はすでに昭和二十五年十月中に同年度産種子一石を被告に送付しているので、残債務は昭和二十六年度産の一石分だけであつた。従つてこの部分の債務不履行を理由に解除するとしても、被告は原告がすでに履行をすました部分も含めた示談契約全部の解除をすることは許されない。原告が種子二石の債務中二分の一を履行しているので被告は残りの二分の一について解除できるだけである。従つて原告としては受領した代金十万五千円中せいぜい二分の一の返還義務があるにすぎないから被告がその代金全額を以て相殺を主張するは失当である。」〈立証省略〉

被告訴訟代理人は「原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とする」との判決を求め、次のように述べた。(原告の主張に対する認否並に抗弁等)

第一、(一) 原告主張の請求原因一、二記載の事実は認めるが三記載の事実は争う。

(二) 被告が高松高等裁判所昭和二十八年(ネ)第三四〇号事件判決で敗訴したのは、被告の昭和二十五年二月十六日の解除は有効であるがしかしその後原被告間に昭和二十五年七月十日売買代金十万五千円の返還に代えて原告が被告に昭和二十五年度産ごぼう種子一石、昭和二十六年度産ごぼう種子一石計二石を代物弁済する旨の示談契約が成立しているとの理由であつた。ところで原告はその契約に基く昭和二十五年度産種子一石は送付したが、昭和二十六年度産のものは遂に送付しない。そこで被告は昭和二十九年六月八日附、同月十一日到達の内容証明郵便でその債務不履行を理由に原告に対し右示談契約解除の告知をした。これによつて契約は解除されたので被告は、以前に原告に被告が交付した売買代金十万五千円中原告から送付の種子一石分代金二万一千円を差し引いた残金八万四千円につき原告に対し返還請求権がある。そこで本件金八万二千円につき被告がそれを原告に返還すべき義務があるとしても、被告は原告に対する右金八万四千円の反対債権を以て対等額で相殺する。

第二、(一) 原告主張の第一の(二)の事実中、原被告間に原告主張のような示談契約ができたこと、被告が原告から昭和二十五年度産種子一石の送付を受けたこと、別に原告から落花生六石を代金八万二千円で買い受けたこと、被告が原告主張のような訴の提起、債権仮差押、仮執行宣言に基く強制執行をしたこと、被告が原告に対し履行の催告をしていないこと、原告から昭和二十九年十月中ごぼう種子一石の送付を受けたことは認めるが、被告は原告の示談契約上の債務の履行につき受領を拒んだことはない。

(二) 原、被告間の前記示談契約上の種子の給付債務は性質上の定期行為債務ないしは約定上の定期行為債務であるから、被告が原告の債務不履行を理由にその契約を解除するのに履行の催告は不要である。すなわち右示談契約の内容は昭和二十五年度産ごぼう種子一石、昭和二十六年度産のそれ一石を原告が被告方に送付して代物弁済するというのであるが、(イ)一般にごぼう種子は八月下旬に新種が採れ、それが集荷され種物商等に発送されるのは九月から遅くても十月上旬頃までのことである。種物商はごぼうの種子蒔の時期が遅くても翌年二、三月頃であるからそれまでにはその売捌を終る。そしてこの種子蒔の時期を過ぎて次年に持ちこすと種子の発芽が十分でないため、農家がそれを好まず種物商も自己の信用を害するので、持ちこしは避けている。すなわち種子には寿命があり、ごぼう種子の寿命は産出年度の翌年二、三月頃まである。従つて種物の卸商は産出年度の九月には大体その買付を終り小売商その他に対し十月中にできるだけ早く売却を終るようにし、遅くても産出年度内にその売捌を終らなくてはならないのであつて、その入手の時期を失えば当然その年度内の販売の機会を失うので頭初の種子入手の契約は結局その目的を果さないため解約の外道がないのがごぼう種子取引の特質である。従つて産出年度を定めたごぼう種子の取引は性質上当然に定期行為でなければならない。ところで被告は種物の卸小売商で原告も種苗商の登録を持つ業者であるから、さような事情はよく知つている筈である。そこで被告は、右示談契約による昭和二十六年度産の種子は、同年十月中に原告から引渡を受けねばならないのであつて、万一翌二十七年二、三月の種子蒔の時期後にその引渡を受けたのでは契約の目的を達することができない。そして前記のように原告は昭和二十六年度産の種子一石は遂に送付せず、昭和二十九年秋頃送付してきた種子一石は、それを被告は本件紛争の和解を容易にするため一応受領したが、昭和二十六年度産のものではなくて昭和二十九年度産のものであつた。このことは原告も昭和二十九年になつて昭和二十六年度産の種子を送付しても契約の目的が達成せられないことを承知なのでそうしたものであつて、このこと自体で、原告自身が産出年度を定めた種子の給付債務は定期行為であることを暗に認めたものといえよう。(ロ)次に右示談契約に従来の原、被告間の取引が紛叫したため、被告が昭和二十五年二月十六日一度その取引契約を解除した後の同年七月十日原告からの申出で締結されたものであつて、いわゆる裁判外の和解である。かような場合その契約上の債務の履行は約定の履行期に確実に履行されねばならない性質のものである。以上のところから原告の債務は当然定期行為債務にあたるものといえるからである。

第三、原告主張の第二の(三)の事実中被告が昭和二十五年度産の種子の送付を受けた時期が同年十月中であることは認めるが、その他は争う。」〈立証省略〉

理由

被告が昭和二十六年一月原告に対し前渡金八万四千円の返還請求権があると称して、原告を相手に、高松地方裁判所にその前渡金返還請求の訴訟を提起し(同庁昭和二十六年(ワ)第二〇号事件)、同裁判所は昭和二十七年一月十四日被告勝訴の判決、すなわち本件原告は本件被告に対し金八万四千円及びこれに対する昭和二十六年二月二日以降その支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ、訴訟費用は本件原告の負担とする、この判決は本件被告が本件原告のため金二万八千円又はこれに相当する有価証券を担保に供するときは仮りに執行することができる旨の仮執行宣言付判決の言渡をしたこと、被告がこの仮執行宣言付勝訴判決の正本に基いて、原告を相手に、水戸地方裁判所に対し債権差押並に転付命令を申請し(同庁昭和二十七年(ル)第三号事件)、同裁判所から昭和二十七年二月十八日附で、原告の訴外株式会社富士銀行水戸支店に対する金八万二千円の債権の差押並に転付命令を受け、その命令が同年同月十九日右訴外銀行に、同年同月二十日原告にそれぞれ送達され、被告はこの命令に基き同年同月二十一日その債権の取立をすましたこと、ところがその後の同年九月十九日この強制執行の基本となつた前記仮執行宣言付判決は原告からの控訴(高松高等裁判所昭和二十七年(ネ)第四六号事件)の結果同高等裁判所でそれを取り消す旨の判決が言い渡されたことは当事者間に争がない。

ところで被告は相殺の抗弁を主張するのであるが、しかしこの主張は次に述べるような理由で採用することができない。すなわち原告が被告からそれまでの取引上売買代金として十万五千円を受領していたが、昭和二十五年七月十日原告からその代金の返還に代えて昭和二十五、六年度産のごぼう種子各一石計二石を被告に代物弁済する旨の示談契約ができたこと、ところが原告はその契約の履行として昭和二十五年度産の種子一石は被告に送付したが昭和二十六年度産のそれは送付しなかつたこと及び被告がそのことを理由に原告に対して昭和二十九年六月八日附、同月十一日到達の内容証明郵便で右示談契約解除の告知をしたことは当事者間に争がない。ところで被告は原告が昭和二十六年度産の種子を送付しなかつたのは債務の不履行である旨を主張する。しかしながら前記のように原、被告間に示談契約ができたのは昭和二十五年七月十日のことであるが、その約定に基き原告が昭和二十五年度産種子一石を被告に送付してから間もなく翌二十六年一月十六日被告は原告を相手に前記の売買代金につき高松地方裁判所に返還請求訴訟(同庁昭和二十六年(ワ)第二〇号事件)を提起し、その返還請求権を理由に同年同月二十九日原告の第三者に対する金八万二千円の債権につき仮差押をし又その後右訴訟事件の仮執行宣言付勝訴判決に基いて原告に対し水戸地方裁判所から昭和二十七年二月十八日附で債権差押並に転付命令を受けその執行によつて右の金八万二千円の債権を取り立てたこと、なお、右訴訟事件についてはその後一審判決を取り消し事件を原審に差し戻す旨の控訴審の判決があり更めて一審から審理が続行されて昭和二十九年まで繋属し同年六月十七日ようやく被告敗訴の判決が確定したものであることは当事者間に争がなく、かような事実に成立に争のない甲第四、五号証を綜合すれば、被告は前記示談契約成立後も終始その契約の成立を否定し前記売買代金の返還を求めて原告と抗争する態度をとつていたことが明らかであり又以上の事実と当事者間に争がない原、被告が種物業者(被告は卸、小売業者)であるということ並に証人佐野岩夫、成瀬晴二、佐野繁雄の各証言を綜合して認められる種物業者のごぼう種子の買付は大体産出年度の十二月頃までであつて原告からの昭和二十六年度産の種子一石についても約定の履行期は同年十二月頃までであるとの事実とを綜合すれば、その約定の履行期当時には前記訴訟事件は当事者の抗争最中でまだいずれとも全くその結果が判明しない状態であつたことが明らかである。かような事態の下では、殊に債権者である被告の右のような態度からすれば、仮りに債務者である原告が昭和二十六年度産種子一石を送付したとしても、被告はその受領を拒否するかあるいは少くともそれを前記示談契約上の債務の履行として受領することはしないだろうことが明らかであるから、原告がそれを送付しないばかりでなく言語上の弁済提供もしないまゝ約定の履行期を過ぎたとしても、そのため原告に債務の不履行(履行遅滞)の責任があるということはできない。従つて原告の債務不履行を理由とする被告の解除の告知はその効力がないからである。

してみるとその他の争点について判断をするまでもなく、被告としては原告に対し前記強制執行によつて給付を受けた金八万二千円の返還義務があることは明らかであるが、更に本訴請求は民事訴訟法第百九十八条第二項に基く請求であつて、それは故意過失を要件としないがしかしその性質は不法行為に基く請求に類似するものと解するのでそれに関する法理を類推適用すべきものであるから、被告が少くとも右金員につきそれを取り立て現実に給付を受けた当日であることが当事者間に争のない昭和二十七年二月二十一日以降その金員の支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金についても被告はそれを原告に対し支払うべき義務があるといわねばならない。そこでその他の争点についての判断は省略し、原告の被告に対する本訴請求を正当として認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、仮執行の宣言につき同法第百九十六条を適用して主文のとおり判決をする。

(裁判官 谷本益繁)

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